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「通りで痛いと思った」
薫は片膝を立て着物の裾を捲った。
丁度、膝小僧の内側に拳半分くらいの青あざがくっきりと出来ている。
いつ出来たのだろうかと思案するが、普段から痣や打ち身は希ではないので然程気にはならない。
「ま、そのうち治るでしょ」
と楽観し軽くぽんっと膝を叩いた。
「いっ…!いたーい!」
思ったより強く響いてしまい思わず叫ぶ。
自分の間抜けさに呆れつつ触れることもままならず、じんじんとくる鈍痛に耐えた。
「薫殿?今何か…」
悲鳴を聞いてやってきたらしい剣心がからりと障子を開けたが、薫を見た瞬間目を見開きそのまま固まってしまった。
「大丈夫、なんでもないの」と両手をぶんぶんと交差させながら剣心の目線に合わせ視線を下げると、裾が捲れ上げ内腿まで脚が露になっている。
「きゃー!馬鹿!出てってよ」
「…っあ、すまぬ!」
「っ助平ー!」
手当たり次第物を投げつけられ後ろ手に障子を閉める瞬間、剣心の後頭部にがいんっと鈍音をたて鼠色の急須が直撃した。
「おろろ~不可抗力でござるよ」
と頭を擦りながら抗議したところで返ってくる言葉は馬鹿だの助平だの想像した通りで思わず苦笑した。
(まぁ…助平は当たりでござるな)
急須が割れてないことに安堵しながら、薫の居る部屋の障子を見つめた。
(……白かったな)
快活で男勝りな少女に秘められた女の部分を図らずとも見てしまい、
僅かながらに動揺している自分がいる。
まだまだ小娘と思っていた薫に心乱され、してやられた感があったので、
「やはり薫殿も女でござるなぁ」とからかい口調で聞こえる様に言うと、直ぐに「何ぃ~! 」と何時もの怒号が返ってきた。
「せ、拙者、買物へ行かねば」、すたこらとその場から離れた。
胴着から覗く胸間だとか首をかしいだ時に見える細い項だとか、意識しないように徹していたのに。
「全く、不意打ちでござるよ…」
と呟き頭を掻きつつも、その割にはじっくり眺めてしまったなと心中の素直さに笑いが込み上げた。
今宵寝付けるだろうかと思案しつつ、豆腐屋の声がする方に歩きだした。
2008.03.01
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